高原


尾根に夕日が沈みかけ、山肌を風が駆け上がり月が光りだした。

ライダースだけでは巻き込む風の冷たさに耐え切れず走るのをやめた。朝夏だった季節が秋に変わっていた。

いくつもの峠を越え山間を走った。

テントは持ち合わせていない。サイドバッグにはブルーシートが一枚と湯を沸すコールマンだけ。灯りは圏外で使えない携帯電話。車体に露があたらないようブルーシートをかけ重し代わりに石を四隅に置く。

シートの中はエンジンとマフラーの熱で暖かい。背中を右のマフラーに押し付けグローブに頭を乗せた。



虫の音が疲れた体を透りぬける。

This entry was posted in ひまわり便り. Bookmark the permalink.